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Translated by Madoka Hasegawa, June 2015

National Institute of Health
WAGR
症候群、11p Deletion、無虹彩に関する研究
2006-2014
研究成果の概要

遺伝子診断法
診療の場では通常、高分解能核型分析とFISH解析(蛍光in situ ハイブリダイゼーション)が通常に用いられています。しかしながら、これらの方法はコストがかかり、開発途上国では実施できません。WAGR症候群、11p Deletions、無虹彩に関するNIHの研究の中でJoan Hanらは、新しい定量的な蛍光PCR法を開発しました。これは、WAGR症候群とその他の欠失/重複症候群を診断するための、遺伝子コピー数の変化を調べる迅速で安価な検査法です。

新しい定量的蛍光PCR法を用いた、遺伝子コピー数の変化を調べるための迅速かつ安価なスクリーニング法
Rapid and inexpensive screening of genomic copy number variations using a novel quantitative fluorescent PCR method. Stofanko M1, Han JC, Elsea SH, Pena HB, Gonçalves-Dornelas H, Pena SD. Dis Markers. 2013;35(6):589-94. doi: 10.1155/2013/704917. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3830787

肥満
Joan Han
らは、Brain-derived neurotrophic factor(BDNF)をコードする遺伝子のハプロ不全(2対あるべき遺伝子が1コピーしかないこと)が、WAGR症候群における小児期発症の肥満と関連があることを発見しました。この発見は、BDNFがヒトのエネルギーホメオスターシス(恒常性)において重要であることを証明しています。

WAGR
症候群におけるBrain-Derived Neurotrophic factorと肥満
Brain-Derived Neurotrophic Factor and Obesity in the WAGR Syndrome. Han JC, Liu QR, Jones M, Levinn RL, Menzie CM, Jefferson-George KS, Adler-Wailes DC, Sanford EL, Lacbawan FL, Uhl GR, Rennert OM, Yanovski JA. N Engl J Med. 2008 Aug 28;359(9):918-27.

痛覚
BDNF
ハプロ不全のマウスは、過食症(異常に亢進した食欲)と肥満だけでなく、熱痛への反応低下を呈します。Joan Hanらは、WAGR症候群の患者にBDNFのハプロ不全があることは、多くの人が痛いと感じるはずの怪我や病気への行動反応を評価した、親が記入する方式のアンケート調査のスコアが著しく低いということと関連があると述べています。この知見は、BDNFがヒトの痛覚において役目があることを示唆しています。

WAGR
症候群の患者におけるBDNFハプロ不全は、痛みへの行動反応低下と関連している
BDNF Haploinsufficiency in Patients with WAGR Syndrome Is Associated with Decreased Behavioral Responses to Pain. Rebecca L. Levinn, Jack W. Tsao, Diane C. Adler-Wailes, Chanelle A. Wijesinghe, Kyra S. Jefferson-George, Owen M. Rennert, Jack A. Yanovski, Joan C. Han. Unpublished findings presented as preliminary data in abstract format at a medical conference.

認知と行動
BDNF
ハプロ不全のマウスは、学習欠損と社会的行動の異常を呈します。Joan Hanらは、BDNFハプロ不全は、WAGR症候群の人たちの中で、ハプロ不全のない人よりもある人の方が知能指数が20ポイント低く、Vineland Adaptive Behavior Composite score(訳者注:国際的に最も活用されている、適応行動の評価尺度)15ポイント低いということと関連があることを認めました。BDNFハプロ不全は、社会性障害の強さ、the Autism Diagnostic Interview-Revisedにおける自閉症の基準に合致する確率とも関連していました。しかし、Autism Diagnostic Observation Scheduleと小児精神科医による臨床診断に基づく真の自閉症の基準を満たす確率とは関連がありませんでした。この知見は、BDNFにはヒトの神経-認知発達における役割があることを支持しています。

WAGR/11p13
欠失症候群におけるBrain-derived neurotrophic factor(BDNF)ハプロ不全と適応行動の水準の低さ及び認知機能の低下との関連性
Association of brain-derived neurotrophic factor (BDNF) haploinsufficiency with lower adaptive behaviour and reduced cognitive functioning in WAGR/11p13 deletion syndrome. Han JC1, Thurm A, Golden Williams C, Joseph LA, Zein WM, Brooks BP, Butman JA, Brady SM, Fuhr SR, Hicks MD, Huey AE, Hanish AE, Danley KM, Raygada MJ, Rennert OM, Martinowich K, Sharp SJ, Tsao JW, Swedo SE. Cortex. 2013 Nov-Dec;49(10):2700-10. doi: 10.1016/j.cortex.2013.02.009. Epub 2013 Feb 19. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3762943/

睡眠とメラトニン産生
WAGR
症候群の無虹彩は、PAX6ハプロ不全によって生じます。この遺伝子は、松果体の発生において働きを持っているとも信じられています。松果体とは、脳内にある構造物で、日内リズムを制御し、睡眠ホルモンであるメラトニンを産生しています。Joan Hanらは、WAGR症候群と孤立性無虹彩の患者の55%が、松果体が発育不全であり、メラトニンの産生が低下しており、睡眠障害が増えると発見しました。このことは、PAX6遺伝子が松果体の発達と機能において重要な役割をもっていることを示唆しています。

WAGR
症候群やPAX6突然変異によりPAX6ハプロ不全のある患者における、松果体低形成とメラトニン減少
Pineal Hypoplasia and Decreased Melatonin in Patients with PAX6 Haploinsufficiency Due to WAGR Syndrome or PAX6 Mutations. Alyson E Hanish, John A Butman, Amanda E Huey, Mark D Lee, Emily Yin, Lindsay A Hunter, Melanie D Hicks, Tanvee Singh, Matthew Tsang, Joan C Han. The Endocrine Society’s 94th Annual Meeting and Expo, June 23–26, 2012 – Houston, TX June 23, 2012. Unpublished findings presented as preliminary data in abstract format at a medical conference

脳神経
Joan Han
らは、脳神経、特に嗅覚(CN)と眼の外転(CN)に関連する神経の発育が、ないか不完全であることが、WAGR症候群患者では稀ではないと発見しました。このことは、11番染色体上のWAGRの責任領域近くにある遺伝子が、これらの脳神経の発生に重要であることを示唆しています。

WAGR
症候群における嗅神経(CN)と外転神経(CN)の無形成
Agenesis of the Olfactory (CN1) and Abducens (CN VI) Nerves in WAGR Syndrome. Society of Neuroradiology 49th Annual Meeting in Seattle, Washington in June 2011. Unpublished findings presented as preliminary data in abstract format at a medical conference.

脳の構造上の相違
Joan Han
らは、WAGR症候群患者と孤立性無虹彩患者の間に脳の構造上の違いがあることを発見しました。このことは、無虹彩をひきおこす遺伝子であるPAX6以外の、11番染色体上にある他の遺伝子が、脳構造に寄与している可能性を示唆しています。

WAGR/11p deletion
症候群患者における脳構造の形態学的変化
Morphologic Alterations in Brain Structure in Patients with WAGR/11p deletion Syndrome. Organization for Human Brain Mapping’s 17th Annual Meeting in Quebec City, Canada,  June 2011. Unpublished findings presented as preliminary data in abstract format at a medical conference.

低身長
Joan Han
らは、WAGR症候群患者の身長が予測される身長より低いことを見出し、最終的な身長が低いことは成長ホルモンの不足とは関係がないということを発見しました。

WAGR
症候群における小児期の身長
Childhood Stature in WAGR Syndrome. RL Levinn, JC Han, CA Wijesinghe, JK Gustafson, JM Checchi, DC Adler-Wailes, KS Jefferson-George, OM Rennert, JA Yanovski, Unit on Growth & Obesity, PDEGEN, NICHD, NIH, Bethesda, MD. Unpublished findings presented as preliminary data in abstract format at a medical conference.

未発表のさらなる知見

WAGR
症候群患者は以下のようなことがしばしばあります:
・口蓋の異常、歯の反対咬合、咽頭の狭さ
・膵炎のリスク上昇、とりわけ中性脂肪が高値のとき。PAX6遺伝子は、膵臓の発達において重要な役割をもっていると思われます;それゆえに、PAX6の欠失は、膵炎発症のさらなるリスクファクターである可能性があります。脂肪懸濁液によって体内で分布する麻酔薬であるプロポフォールは、一時的に中性脂肪値を上昇させます。NIHのスタディに参加しているある患者が、プロポフォールを投与された後に急性膵炎を発症したことが確認されています。WAGR症候群患者は、アミラーゼ、リパーゼ、中性脂肪の値を定期観察し、これらの検査値が異常である時にはプロポフォールの投与を避けることが賢明です。
・脳の白質、特に脳梁の異常
・聴覚、聴性音響反射、聴性脳幹反応、聴覚処理の異常

National Institute of HealthWAGR Studyについてお知らせ

みなさん、こんにちは
たくさんのWAGRの家族たちが、Bethesda, MarylandNIHに所属するDr Joan Hanと共に仕事をすることを喜びにしてきました。ここ数年、Dr HanNIHの研究チームのメンバーは、数十人ものWAGRの家族と仕事をしてきて、その研究成果は、よくわからなくていらだたしいWAGR/11p deletion症候群の医療の世界の中を私たちが歩み、対処していくのに役に立ってきました。

Dr Han
は最近、Memphis, Tennesseethe Bonheur Children’s Hospitalで彼女の仕事と研究を続けるために、20146月の終わりにNIHを離れることを知らせてくれました。

下に記載するものが、Dr Hanの新しい連絡先です。Joanはすでに連絡先を移行させているので、この連絡先はもう使えます。今後のスタディや、あなたのWAGRの家族の健康のことで特定の心配事などについて彼女に質問があれば、以前と同様に、遠慮なく彼女に連絡をとってください。

Joan C Han, MD
Director, Pediatric Obesity Program
Associate Professor, Division of Pediatric Endocrinology
Department of Pediatrics, University of Tennessee Health Science Center
Le Bonheur Children’s Hospital
50 North Dunlap Street, Room 476R, Research Building
Memphis, TN 38103
office phone: 901-287-6408
office fax: 901-287-4478
EMAIL: jhan14@uthsc.edu

極小さな希少疾患の組織として、International WAGR Syndrome Associationは、WAGR/11p deletion症候群に注目したNIHの調査研究がなされたことが、どんなに幸運なことであったかということをよく認識しています。さらに、ここ数年間の私達とDr Hanとの関係はとても貴重であり、彼女のプロ根性、親切、私達への献身をとてもありがたく思っています。Dr Hanの研究がNIHを離れても終わらないと知って、とてもうれしいです。

Dr Han
によれば、「私は、途切れなく研究が続くように、全ての臨床プロトコールをLe Bonheur/UTHSCに移行させるよう取り組んでいる」とのことです。

私たちは、Dr HanMemphisに移って詳細がわかり次第、WAGRの研究についてのさらなる情報を提供できるのを楽しみにしています。それまでは、必要があれば遠慮なく直接Dr Hanに連絡をとってください。

Thanks,
Shari Krantz,
IWSA Board Chair(and WAGR mom to Amy, 18, Maryland)

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