無虹彩

・このページの内容は、International WAGR Syndrome Association(IWSA)の許可を得て、IWSAweb site上の記事を翻訳・転載したものです→こちら
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Translated by Madoka Hasegawa, June, 2015

WAGR
症候群の「A」は、「無虹彩(Aniridia)」を表しています。WAGR症候群の子どものほぼ全例に無虹彩がありますが、無虹彩がないWAGR症候群の症例も報告はあります。


無虹彩とは、最もわかりやすい症候に基づいて名づけられた眼の状態のことで、文字通り「虹彩(眼の色のついた部分)がない」ことを意味します。しかしながら、検眼鏡で見ないとわからないほどわずかかもしれませんが、たいていの無虹彩の人はいくらかの虹彩組織を持っています。無虹彩の人の瞳孔は拡大しています。この拡大した瞳孔のために、とても暗い色の眼にみえます。

無虹彩の多くは、自身が無虹彩である親から遺伝して、発症します。これは、家族性無虹彩と呼ばれます。次に多いのは、遺伝性ではないもので、散発性無虹彩と呼ばれます。家族性と散発性いずれの無虹彩も、PAX6という遺伝子の変異によって生じます。
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参考:無虹彩と遺伝学→こちら)

無虹彩は眼の発達障害です;妊娠初期に、眼の正常な発達が止まってしまっているため、生後の眼に様々な問題を生じます。下記のような状態が、生まれた時にあるか生まれてから生じてくるかもしれません。

・緑内障:眼の中の圧が上昇している状態。無虹彩の人々は緑内障を生じるリスクが特に高く、その治療は難渋することがあります。生まれてすぐから定期的な検査を始めるべきです。
・白内障:目の水晶体の部分が混濁する。生まれた時点からよくあります。白内障が視力の妨げにならない限り、外科的摘出は必要ありません。
・黄斑または中心窩低形成:網膜中心窩または黄斑領域の発育不良。黄斑低形成は、視力が悪いことの主要な原因です。これは眼鏡で矯正できません。
・無虹彩角膜症:角膜パンヌスとも呼ばれます。角膜症とは、血管の増殖によって引き起こされる角膜の混濁です。角膜症は小児期または青年期に気づかれるかもしれませんが、多くは20代~40代で診断されます。眼の手術をすると、角膜症発症のリスクが増加します。
・無虹彩線維症症候群:前眼房に過剰な線維結合組織が形成される。多くは、無虹彩の眼に外科手術を行った際の合併症として生じます。複数回の施術によりリスクが増加します。早期の外科的介入が推奨されています。
・眼振:目の不随運動。無虹彩の人々には特によくみられます。眼の動きの程度や方向は個人差が非常に大きいです。眼振についてのさらなる情報は、American Optometric Associationのウェブサイトで見ることができます。
・眼瞼下垂:上まぶたが異常に下がっていること。眼瞼下垂は、通常瞼をあげる働きをする筋肉が弱いと生じます。眼瞼下垂は無虹彩でたまにあります。生まれた時からあるか、生まれて数か月のうちに気づかれるでしょう。眼瞼下垂はウィルムス腫瘍の治療によく用いられる薬であるビンクリスチンの副作用としてもおこる可能性があります。必要ならば、眼瞼下垂は外科的に治療することができます。
無虹彩の合併症の治療は困難ではありますが、進歩もみられています。無虹彩の治療における進歩として、人工虹彩人工角膜の継続的な発展があります。しかしこれらの高度治療は今のところ研究段階であり、特定の状況を除いては適切な選択肢ではありません。

無虹彩についてよくある質問

私の赤ちゃんは見えているのでしょうか?
虹彩がないだけでは、盲目にはなりません。各個人の視機能は、黄斑の発達、白内障の存在、緑内障の程度といった無虹彩に付随する他の眼疾患の種類や程度に左右されます。視力は個人差が非常に大きいですが、たいていの無虹彩の人の視力は20/80(0.25)20/200(0.1)の間くらいです。

視力(見る能力)は次のような方法で測定されます:
20/80=平均的な人が20フィートの距離で見えるものが、20フィート(6m)の距離で見える時、20/20(1.0)です。
20/80=平均的な人が80フィートの距離から見えるものが、20フィートまで近づかないと見えない時20/80(0.25)です。
20/200=平均的な人が200フィートの距離から見えるものが、20フィートまで近づかないと見えない時20/200(0.1)です。
赤ちゃんが見えているかどうかをまだ小さい時期に評価するには、光、物、顔に興味があるか、興味のある物を左右に目で追わせて喜ぶかどうかで判断します。顔の表情によっても見え具合がわかります。

しかし、普通の見え方をしている子供の親は、生後2週から3か月の時期に、これら見えているサインに気づくのに対し、無虹彩の赤ちゃんはもっと大きくなってからでもこのようなサインを見せ始めません。無虹彩の子供の親は、自分の子供は69か月になってやっと、見えるようになったようだとよく言います。

あなたの子供にいくらか視力があるようならば、持っている視力をできるだけたくさん活用する機会を与えることが大切です。弱視の子供が、最大限その視力を伸ばせるようにするための助けとなる本や情報源はたくさんあります。

羞明とはなんでしょうか?子供にどうしてやればいいのでしょうか?
羞明は、無虹彩の人にはよくあることです。羞明は文字通り「光が怖い」ということです。本当の恐怖症ではありませんが、まぶしい光があると眼に不快な感じや痛みを感じるような医学的な状態です。無虹彩の人は、日光の下でも室内でも、この不快感を経験します。普通の目では、虹彩が太陽に対し眼を保護するように働きます。角膜に過剰な日光をあびると、全ての人において白内障のリスクが上がると研究によって示されているので、無虹彩の人は室外では眼を保護するよう特に気を付けなければなりません。

無虹彩の小さな子どもは、光に過敏であることで特に苦労するようです。恐らく目を細めて目に入る光の量を調節する方法を取得することで、成長するにつれてこの苦労は減っていくようです。人工の(室内の)光は無虹彩の人にとって害はなく、通常不快に感じるほどまぶしくないので、無虹彩の子供のために室内の明かりを暗くする必要はありません。室外では、曇りの日であっても、紫外線から守るためと、まぶしさを和らげ安全を確保するために、暗いサングラスと帽子が重要です。

眼鏡とは何?
無虹彩の子供について家族が初めにする質問の一つが、処方眼鏡が子供の役に立つかどうかということです。この質問に答えるには、処方レンズがどう働くかを理解することが大切です。眼鏡は、眼が「近視」か「遠視」(またはその両方)であるとき視力を矯正します。近視や遠視は、眼の前部が通常よりわずかに短いか、長いか、よりいびつな形をしていることによって生じます。この不規則な形によって、光は目に入ってくるときに歪められ、見え方がぼんやりします。目の前にレンズを置くことで、この歪みが矯正され見え方がはっきりします。

無虹彩の人の中には近視や遠視の人がいて、眼鏡はこれによる見え方の悪さを改善します。しかしながら、たいていの無虹彩の人は目の後部、中心窩や黄斑の異常によって視力が低下しています。このような異常は眼鏡で矯正できません。

コンタクトレンズ
過去に、無虹彩の人に対して特別なコンタクトレンズがよく処方されました。このコンタクトレンズには人工的な虹彩が描かれていて、眩しさを減らすのに役立つと考えられていました。最近では暗い色のコンタクトレンズが同じような理由で使われてきました。

無虹彩に関する新しい研究によると、無虹彩の角膜は「limbal cell」と呼ばれるある重要な細胞が欠損していいて、この細胞は、角膜を正常に再生し修復させる働きがあるということです。この細胞がないことで、無虹彩の角膜は術後の回復が悪く、手術をしていなくても瘢痕化し不透明になります。この瘢痕は「無虹彩角膜症」や「角膜パンヌス」と呼ばれます。このように角膜修復能力が低いので、ある特殊な状況を除いては、無虹彩の人がコンタクトレンズを使用することは、今は薦められません。

Optometrist
Ophthalmologistの違いは何か?
Optometrist
は医師ではなく、検眼医です。Optometristは視力の問題や目の病気を診断し、眼鏡やコンタクトレンズを処方し、眼疾患を治療する薬を処方します。手術はできませんが、術前術後の処置は行います。OphthalmologistOptometristはよく同じクリニックで働き、患者を一緒に診ます。

Ophthalmologistは目や見え方に関する内科的・外科的治療や眼疾患や外傷からの予防についての専門家です。通常の目の検査、診断、眼疾患の治療、眼鏡の処方、手術、全身疾患に起因する眼疾患の管理などすべての領域の治療を行います。

アイケアの基本
無虹彩の小児は診断がついたらできるだけ早く、ophthalmologist(眼科医)の診療をうけるべきです。

 無虹彩の小児や幼児の眼科診療とは:
・およそ36か月ごとの検査-緑内障などの合併症がある場合はもっと頻回に。
・眼の構造全体を調べる検査。この検査は、小児期と幼児前期全体にわたって定期的な間隔で、麻酔をかけて行われます。
・可能であれば、初診時や麻酔下に目の写真を撮っておき、変化があった時にもその都度とっておきます。
・屈折(近視や遠視)、眼圧測定、眼位、筋緊張を調べる検査や、その他必要な検査
担当眼科医はあなたと次のことについて話し合っておくべきです:日光から目を保護する重要性、感染や緑内障のサインや症状、質問や心配事があるとき誰に相談すればよいか

目薬
無虹彩の子供は時に、感染や緑内障を治療する為に目薬が必要となります。無虹彩の角膜は敏感で治癒力が弱いので、可能な限り全ての目薬は防腐剤なしのものにすべきと、担当眼科医に注意させたいところです。

大騒ぎせず目薬を差す方法がいくつかあります。他の親からの提案をいくつか示します:
・小児-タオルやブランケットにくるみ(腕や手を体に添わせるよう下したまま)、床に寝かせ、顔をあなたのほうへ向けて頭を膝の間に挟みます。これで頭が動かずあなたのほうへ向けたままにでき、両手もあきます。
・閉じた眼のふちに目薬を落とします。子供が目を開けると、目薬は目の中に入ります。
・上瞼を押し開けようとする代わりに、下まぶたを下げてみます。下げた瞼でできた袋の中に目薬を落とし、手をはなします。

参考:
Just Diagnosed: A Guide for Parents “Hannah James, Aniridia Network International, and Kelly Trout, BSN, RN, International WAGR Syndrome Association

最終更新日:20153

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