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Translated by Madoka Hasegawa, June, 2015

緑内障
無虹彩の患者のうち50%かそれ以上もの人に緑内障は発症します。生まれてから成人期を通して、生きている間いつでも起こり得ますが、青年か成人期に始まることがより一般的です。この記事では、緑内障の定義、診断方法、治療法、無虹彩の幼い子供の緑内障をみることについて記載します。

緑内障とは何か?

正常の眼では、虹彩と角膜の間には少量の液体が存在します。この液体は眼房水と呼ばれます。眼房水は毛様体と呼ばれる構造によって産生され、虹彩の後ろから瞳孔を通って流れ出ます。これは前房(角膜の後ろと虹彩の前面の間の空間)を満たします。眼房水は、隅角と呼ばれる構造(眼の中の排出路であり、強膜(眼の白眼の部分)にある)で濾過され、眼の外の静脈網に合流します。

眼房水が産生される量と排出される量が調整されることで、眼房水を一定の圧に維持される仕組みになっています。眼の中の圧力は、眼内圧(IOP: intra-ocular pressure)と呼ばれます。

典型的には緑内障は、眼房水の眼からの流出が減るか妨げられることによって生じます。この破綻は眼内圧(IOP)の上昇を引き起こし、眼後部の視神経を障害させます。未治療のままにすると、緑内障は失明を起こします。

無虹彩の人は、虹彩の低形成に加えて、眼の中の他の構造も同様に低形成であることが多いため、緑内障のリスクが増しています。この異常が、房水の流出の破綻と眼内圧の上昇に関連しています。

無虹彩の眼の特異な解剖が、この治療をとても困難なものにします。無虹彩の人が緑内障になったら、経験のある専門家に紹介して診てもらうことがとても重要です。

緑内障はどうやって診断されるか?
眼圧(眼内圧、IOPと呼ばれます)は、mmHgの単位で測定されます。正常の眼圧は1222mmHgです。IOPが正常値を越えると(22mmHgかそれ以上、個人差があります)、視神経の障害と視野の欠損が起こり、緑内障と診断されます。

IOP
が正常より高いけれど、緑内障の兆候(視神経の障害や視野の欠損)がみられない場合は、高眼圧症と呼ばれます。

IOP/
眼内圧を測定し、視神経や視神経乳頭の状態を調べるために、いくつかの基本的な検査が用いられます。その検査とは:
眼圧測定(Tonometry)--眼内部の圧を調べる
隅角鏡検査(Gonioscopy)眼の前部近くの構造を調べる
眼底検査(Ophthalmoscopy)--眼の後部構造を調べる

眼圧測定
眼圧測定検査は、眼の内圧を測定します。通常は、眼の表面に麻酔をするために目薬が使用されます。それから医師は、角膜に直接、特別な器械を接触させます。これで測定値が得られます。圧平眼圧測定法とトノペンが、眼圧(IOP)測定によく用いられる器械です。これらの器械は、定期スクリーニングで使われる空気圧による眼圧計よりも、より正確な測定値が得られます。

Applanation tonometry

Tonopen

隅角鏡検査
隅角鏡検査は眼の前部、角膜と虹彩の間にある眼の前方部分(無虹彩の人では、虹彩があるべき部分)を見るための検査です。


眼底検査
眼底検査は、眼の内部、特に視神経や視神経乳頭を見るために実施されます。暗い部屋で、医師は検眼鏡(端に小さな光源がついている器具)を用いて目を覗き込みます。この検査で医師は、視神経の形や色、眼の後部構造を見ることができます。

Ophthalmoscopy

検眼鏡を通して医師がみているもの

緑内障と診断されたら、どのように治療されるのか?
緑内障は通常、薬剤(点眼薬)か手術によって、場合によってはその両方で治療されます。点眼薬も手術も、眼房水を目から排出させるのを促すか、眼房水の産生を減らすことで眼圧を下げます。無虹彩患者の緑内障は、通常の人よりも治療が困難なことが多いです。

緑内障の薬物治療
緑内障の薬は、さまざまな強さや組合せで使用されます。医師は、緑内障をコントロールするのに最も効果的で副作用も最も少ない、最小量の薬から処方し始めるでしょう。緑内障の薬は眼圧をコントロールする為に、毎日定期的に使用されなければならなりません。ほとんどの薬には何らかの副作用がありますが、多くの場合その副作用は、数週間のうちに減っていくものです。もし薬/用量が緑内障をコントロールしていないようだったり、許容できない副作用がある時には、違う薬や薬の組み合わせを試してみることも可能です。作用機序と副作用も記された、緑内障治療に用いられる薬剤のわかりやすいリストを、The Glaucoma Research Foundationのサイト(http://www.glaucoma.org)で見ることができます。

緑内障手術
緑内障の手術には、レーザー治療、「従来の」緑内障手術(線維柱体切除術)、チューブシャントの留置があります。異なるタイプの緑内障手術に関する議論は、The Glaucoma Research Foundationのサイト(http://www.glaucoma.org)で見ることができます。

(
訳者注、以前の記事より)
レーザー治療:アルゴンレーザーが線維柱帯形成術と呼ばれる施術のために使われることがある。レーザーを線維柱帯に照射して、房水の流出をよくするものである。
緑内障インプラント手術:このタイプの手術では、目の中にドレナージチューブを埋め込む。ドレナージチューブは角膜と強膜(白目の部分)の境目に埋め込む。この手術は無虹彩に伴う緑内障には最も効果的な施術であるかもしれない。緑内障インプラントつまり緑内障ドレナージ装置(下の写真参照)には数種類のものがある。最も一般的なものは、Molteno(モルテノ)インプラント、Baereldt(バルベルト)インプラント、Ahmed(アーメド)インプラントである。これらの装置を使い、プラスチックのチューブが角膜の後ろの前房に挿入され、チューブが人工ドレーンのように働き、房水はこれを通って目の外層へ流出する。
緑内障インプラントはたくさんの形状とサイズのものがある。透明で薄いチューブ(土台部分)が眼の前部に挿入され、眼の外側にあるリザーバー(白い部分)につながれる。インプラント施術後、リザーバーは眼科医以外には見えないであろう。

無虹彩の子どもの緑内障のモニタリングと診断における特別な問題点
子供は検査に協力的でないので、幼い子供の眼圧測定をするのはとても難しいことが多いです。眼圧を測定するときに子供が泣いていると、測定値は実際の値よりも高くでてしまい、正確な評価にはなりません。軽い鎮静剤を使うことを薦める医師もいます(これらの薬は診察室で使用可能です)。子供の眼圧を正確に測定するもう一つの方は、「Exam Under Anesthesia(EUA:麻酔下の検査)」です。

EUA
は、全身麻酔をかけて検査をする方法です。外科的処置とは違いEUAのためには、ごく少量の麻酔薬を使った短時間の麻酔だけで充分です。もう一つのEUAの利点は、眼全体を注意深く徹底的に検査を行えることです。

注意:WAGR症候群で無虹彩がある患者は、プロポフォールという一般的な麻酔薬を投与されるべきではありません。この薬剤は、膵炎発症のリスクを増加させるかもしれません。The National Institute of Child Health and Human Development, NIHによって行われたWAGR症候群とその他の11p deletionにおける包括的なスタディ(未発表)より。
Principal Investigator: Joan Han, MD
Director, Pediatric Obesity Program, Associate Professor, Division of Pediatric Endocrinology, Department of Pediatrics
University of Tennessee Health Science Center, Le Bonheur Children’s Hospital

参考:
Aniridia: current pathology and management. Lee H1,Khan R, O’Keefe M, Acta Ophthalmol. 2008 Nov;86(7):708-15. doi: 10.1111/j.1755-3768.2008.01427.x. Epub 2008 Oct 6.
Ocular and systemic findings in a survey of aniridia subjects. Netland PA1, Scott ML, Boyle JW 4th, Lauderdale JD. J AAPOS. 2011 Dec;15(6):562-6. doi: 10.1016/j.jaapos.2011.07.009.

最終更新日:20153
Kelly Trout, BSN, RN
Health Consultant
International WAGR Syndrome Association

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