・このページの内容は、International WAGR Syndrome Association(IWSA)の許可を得て、IWSAweb site上の記事を翻訳・転載したものです→こちら
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Translated by Madoka Hasegawa, July 2015

WAGR症候群とはなんでしょうか?
WAGR
症候群は、男女ともに罹患する可能性がある希少遺伝子疾患です。WAGR症候群を持って生まれた赤ちゃんは、目に問題を抱えることがよくあり、ある種のがんを発症する高いリスクをもっています。「WAGR」という言葉は、この症候群に関係のある身体と精神上の問題の頭文字を表しています。
(W)ilms’ Tumor(ウィルムス腫瘍)、小児で最もよくあるタイプの腎臓がん
(A)niridia(無虹彩)、眼の色のついた部分である虹彩の一部分か全てがない
(G)enitourinary problems(泌尿生殖器の問題)、例えば男児では陰嚢に降りてこない精巣や尿道下裂(尿道口の位置の異常)、女児では体の中での生殖器や尿路の問題など
(R)ange of developmental delays(発達遅延)
WAGR
症候群のほとんどの人は、これらの中の2つか3つをもっています。WAGR症候群とはいいますが、これら全てが起こるというわけではありません。

WAGR
症候群の他の呼び方:
WAGR複合(WAGR Complex)
・ウィルムス腫瘍-無虹彩-泌尿生殖器異常-精神遅滞症候群(Wilms’ tumor-Aniridia-Genitourinary Anomalies-Mental Retardation Syndrome)
・ウィルムス腫瘍-無虹彩-性腺芽細胞腫-精神遅滞症候群(Wilms’ Tumor-Aniridia-Gonadoblastoma-Mental Retardation Syndrome)
11番染色体欠失症候群(11p deletion syndrome)
WAGR
症候群の原因は、11番染色体(11p13-「11p13」は、WAGR症候群に関係のある11番染色体上の特定の場所を表しています)上の一群の遺伝子が欠失していることです。染色体とは、遺伝的特性がひとまとめに入れられているものです。22対の染色体があり、これは男女ともに同じです。23対目のものが性別を決定し、XY染色体のある人は男性、X染色体が2本の人は女性になります。

WAGR症候群の症状にはどんなものがあるでしょうか?
WAGR
症候群は遺伝的症候群です。WAGR症候群の症状はふつう、赤ちゃんが生まれた後にみられます。お母さんの妊娠中と赤ちゃんが生まれるときの経過には、異常はみられません。お腹の中の赤ちゃんの腎臓が腫大しているのが、妊婦健診のエコーで見えることがあります。眼の問題(無虹彩)はふつう新生児期に気づかれ、通常男児では、泌尿生殖器系の問題も新生児期に明らかになります。

WAGR
症候群を持って生まれた人は、それぞれ乳幼児期、小児期、成人期に発症する病気の高リスク状態にあります。それらの疾患は、腎臓、眼,精巣や卵巣に影響を及ぼします。WAGR症候群のある人にどのような症状が出るかは、その人に発症した疾患の組み合わせによって決まります。

ウィルムス腫瘍WAGR症候群の人の約半分が、ウィルムス腫瘍とよばれるある種の腎臓がんになります。ウィルムス腫瘍の早期は、通常症状がありません。この癌の初期症状としてありえるのは、血尿、微熱、食欲低下、体重減少、気力の低下、腹部膨隆です。

無虹彩WAGR症候群に関連した無虹彩を持って生まれた乳幼児では、生まれる前に正常に目の虹彩が発達していません。そのため、眼の色のついた部分(虹彩)が、部分的か完全にありません。無虹彩は、WAGR症候群を持って生まれたほとんどすべての赤ちゃんにあります。他にも眼の問題はよくあり、子どもが成長するにつれて生じてくるものもあります。例えば、眼のレンズの混濁(白内障)、眼が速く不随意に動くこと(眼振)、眼の中の圧力が高くなることにより生じる全てあるいは部分的な視力低下(緑内障)があります。

泌尿生殖器系の問題:様々な泌尿生殖器系の問題が、WAGR症候群の赤ちゃんに起こり得ます。男児では、尿道口が陰茎の先端ではなく陰茎体のどこかに開口するもの(尿道下裂)や停留精巣が含まれます。女児では、低形成(索状)卵巣、子宮・卵管・膣の奇形などがあります。WAGR症候群の人の中には、生殖器の発達の問題のために、生まれたときの性別が不明瞭となることもあります。WAGR症候群の人は、性腺芽細胞腫というある種のがん(男性では精巣を、女性では卵巣を作る細胞のがん)を発症するリスクが高い場合があります。

発達遅延WAGR症候群の子供には発達の遅れはよくあることです。その重症度は個人差があります。WAGR症候群の子どもの中には、極めて軽度の遅れの人もいます。

WAGR症候群に起こりうる他の症状は:
・自閉症、注意欠陥障害、強迫性障害、不安障害、うつを含む、発達、行動、精神上の疾患
・早期発症の過体重(肥満)と高コレステロール血症
・過剰な食事摂取(過食症)
・慢性腎不全、多くは12歳以降
・喘息や肺炎のような呼吸器疾患や、睡眠中の呼吸の問題(睡眠時無呼吸)
・耳、鼻、喉の頻回な感染症、特に乳児と早期小児期
・歯の問題-叢生歯、乱杭歯
・筋肉の緊張と強さの問題、特に乳児と小児期
・痙攣性疾患(てんかん)
・膵臓の炎症(膵炎)

WAGR症候群はどうやって診断されますか?
無虹彩のようなWAGR症候群を示唆する症状が、通常生まれて早い時期に気づかれ、11p13の欠失を調べるための遺伝子検査が行われます。染色体分析や核型と呼ばれる遺伝子検査は、11番染色体上の欠失領域(11p13)を調べるために実施されます。FISH(蛍光in situハイブリダイゼーション法)と呼ばれるより特殊な遺伝子検査が、11番染色体上のある特定の遺伝子の欠失を調べるために、行われることもあります。

WAGR症候群はどうやって治療されますか?
WAGR
症候群の治療は、各個人に生じた症状それぞれに対して行われます。治療を可能な限り早期に行えるよう問題を早くみつけるために、問題が生じていないか見つけるための定期観察を行うことも重要です。

ウィルムス腫瘍:ウィルムス腫瘍はWAGR症候群の子供の約半分に生じます。腫瘍は通常、13歳の間に発生します。ウィルムス腫瘍のほとんどの例は8歳までに見つけられてきましたが、稀にはより年長での発生例もあります。WAGR症候群と思われる赤ちゃんは、生まれた時から腹部超音波検査を受けるべきです。その後8歳になるまで3か月ごとに腹部超音波検査を受ける必要があります。担当医と親(触診のやり方を教わって)は、お腹の腫れや塊の徴候を感触で調べます。8歳以降は、ウィルムス腫瘍の徴候の観察は、腹部超音波検査や、微熱・食欲低下・体重減少・気力の低下・腹部の膨隆のような症状をみることで行われます。

ウィルムス腫瘍の治療はうまく事が多いです。ウィルムス腫瘍の患者の全生存率は良好で、腫瘍の特徴や発症時の病期に左右されます。治療には、腎臓を摘出する手術、放射線療法、化学療法があります。

無虹彩:
無虹彩の治療は、視力を維持することを目的とします。緑内障や白内障があるときには、薬や手術が役立つでしょう。コンタクトレンズは角膜を傷つける可能性があるので、避けるべきです。

泌尿生殖器の問題:WAGR症候群の子どもは、卵巣や精巣の成長に異常がないか見るために定期的な評価を受けるべきです。異常な性腺を除去したり、性腺のがん(性腺芽細胞腫)を予防するために、手術が必要になることもあります。両側の性腺が除去された場合は、ホルモン補充療法をうけます。WAGR症候群の男児に停留精巣がある場合は、手術が行われます。WAGR症候群の女児に異常な卵巣がある場合は、性腺芽細胞腫が発症しないかみるために定期的な骨盤内超音波検査やMRI検査をうけます。

発達遅延:WAGR症候群の人は、軽度から重度の知的な遅れがあることがあります。中には正常な知能をもつWAGR症候群の人もいます。

WAGR
症候群の子どもは、生まれてすぐか診断がついた時に、早期療育サービスに紹介されるべきです。訓練には以下のものがあります:視機能訓練、理学療法、作業療法、言語療法。特別支援教育もまた、WAGR症候群の子どもが、自身の能力を最大限発揮しながら成長していくのを助けるために利用されます。

腎不全:WAGR症候群で起こりうる腎不全では、高血圧、高コレステロール、タンパクが血液から尿へ漏れる状態(蛋白尿と言います)がよく起こります。WAGR症候群の全ての人は、高血圧と尿たんぱくの定期検査を受けるべきです。これらの問題が生じたら、ACE阻害薬やARBと呼ばれる薬で治療されます。WAGR症候群で腎不全になった人の中には、透析や腎移植をする人もいます。

WAGR症候群は遺伝しますか?
WAGR
症候群は「隣接遺伝子欠失症候群」と呼ばれます。これは、11番染色体(11p13)上の遺伝子のある部分が失われていることによって生じる、ということを意味しています。ほとんどの場合染色体11p13の変化は、卵子と精子がつくられた時や子宮内で赤ちゃんが成長するごく初期に、偶然起こります。ごく稀に、どちらか一方の親が2つの染色体の間の再配列を持っていて(トランスロケーションと言います)、これが赤ちゃんをもつときにある遺伝子の欠失を起こすので、遺伝子の変化が遺伝することがあります。正常の細胞と11p13に変化のある細胞を、一人の体の中で混合して持つ場合もあります。これはモザイクWAGR症候群とよばれます。

次の子どももWAGR症候群であるリスクが高いかどうかを調べるのに、遺伝カウンセリングが役に立ちます。

最終更新日:20155
Kelly Trout, BSN, RN
written in cooperation with the National Human genome Research Institute
National Institutes of Health
http://www.genome.gov/26023527

 

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