症状 どのような病気になりますか?

PAX6WT1遺伝子が欠失するとどうなるの?
 PAX6遺伝子は眼球の発生に関与する遺伝子で、この欠失は無虹彩(生まれつき虹彩がない)と関連すると言われています。無虹彩が見かけ上わかりやすいのですが、実際は眼全体の奇形が生じ、緑内障、角膜パンヌス、中心窩および視神経低形成、白内障、水晶体亜脱臼など様々な眼合併症を生じることが知られています。眼振、弱視、斜視などの症状や、眼瞼下垂、眼裂狭小、小眼球症、眼前部奇形、網膜異形成といった眼の異常の報告もあります。

 WT1遺伝子はウィルムス腫瘍抑制遺伝子の1つで、この欠失はウィルムス腫瘍と泌尿生殖器異常、腎症と関連すると言われています。ウィルムス腫瘍の前がん病変とされるnephrogenic restsあるいはnephroblastomatosisもよくみられます。 泌尿生殖器奇形は、男性では停留精巣と尿道下裂、小陰茎、陰嚢形成不全、女性では様々な子宮および卵巣奇形(子宮低形成、双角子宮、索状性腺など)と性腺芽細胞腫、月経異常などが知られています。

 遺伝子領域の研究が進み、PAX6WT1には、上に述べた以外の働きがあることや、WAGR症候群(11p13欠失症候群)に関連するこれら以外の遺伝子の存在がわかってきました。PAX6は眼球だけでなく、中枢神経や膵臓、嗅覚の異常とも関連があり、神経学的発達への影響や膵炎のリスクが一般より高いこと、脳の前方部分の奇形と嗅覚低下などと関係があることが示唆されています。欠失領域によっては関係がある遺伝子としては、EXT2の欠失は骨軟骨腫という骨腫瘍と、ALX4の欠失は頭蓋骨の異常な孔と、BDNFの欠失は肥満と痛みを感じにくいこと(耐性)とそれぞれ関連があるとされています。精神発達遅滞をはじめとする様々な神経学的異常は、PAX6BDNFPRRG4など複数の遺伝子の関与が報告されています。

一方で、欠失領域内に含まれるまだ特定されていない遺伝子もあると考えられ、今後研究が進み病態解明につながることが期待されます。

WAGR症候群(11p13欠失症候群)に特徴的な病気とは?
WAGR」は、ウィルムス腫瘍(Wilms tumor)、無虹彩(Aniridia)、泌尿生殖器異常(Genital anomalies)、精神発達遅滞(mental Retardation)の頭文字をとったもので、この4徴が古くから知られている特徴的な症状です。近年ではこれらに加え、晩期発症の腎症と末期腎不全が重要な特徴の1つとされています。

また、以下のような疾患が知られています
(
生じる疾患や程度は個人差が多く、これら全てが現れるわけではありません。成長過程のどの段階で発症するかも人によって異なります)

肥満とそれに伴う合併症、睡眠時無呼吸症候群、脂質異常症、膵炎
様々な程度の認知障害・言語習得障害、多彩な精神障害と行動障害(注意欠陥障害、自閉症スペクトラム障害、広汎性発達障害、不安、強迫性障害、感覚統合障害など)、運動障害(微細運動機能・粗大運動機能障害、筋緊張異常、協調運動障害など)、てんかん、脳梁欠損、無嗅覚症
その他、先天性の四肢の異常(内反足、重複母趾、関節形成不全、アキレス腱短縮など)や側彎など脊柱異常、耳鼻咽喉系の疾患(頻回で慢性的な中耳炎と副鼻腔炎など)、呼吸器系疾患(気道過敏症など)、歯科口腔系疾患(不正咬合、乳歯の生えかわりが遅い、小顎症など)、先天性心疾患などが報告されています。

当サイト「医療情報」の「WAGR症候群(11p13欠失症候群)」内の翻訳記事もご参照ください。
また、各疾患の詳細については、当サイト「医療情報」の当該疾患のページも御覧ください。

by Madoka Hasegawa

ご不明な点は、JWSA医療・患者登録担当 長谷川まどか(m-cho◎gk9.so-net.ne.jp)(送信の際◎を@に変更してください)までお問い合わせください

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